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正直者

「こんな的はずれな思い込みをするなんて、不注意だったわ。私はね、あなたは正直で曲がったところのない人だと見ていた。そしてあなたもそのことを密かに誇りにしていると思っていた」
「僕は三十歳になった」と僕は言った。「自分に嘘をついてそれを名誉と考えるには、五歳ばかり年をとりすぎている」
彼女は何も言わなかった。怒りを感じながら、半ば彼女に気持ちを惹かれながら、そして何よりも気の毒に思いながら、僕はその場をあとにした。

グレート・ギャツビー スコット・フィッツジェラルド/作 村上春樹/訳 中央公論新社


私も30歳になったことだし、なにやら考えさせられてしまう。

正直さとは「価値観に縛られず、なおかつ自律的であること」を指すと思うが、
それは誇るようなものではない。もしそれを美徳と考えるようならば、それはすでに
正直さとは別なものだ。小説中の女性はある意味わかりやすい自分の虚栄心、
こうありたいという理想を、男性に求めていたわけだ。
翻って自分はどうかといえば、30歳にもなれば自分が嫌でもさまざまな価値に
引きずられていることに気づかされる。正直さ、すなわち自由とは、そうあって然る
べきものではあるけれど、それがほとんど不可能に近いことを思い知る。もっと
わかりやすく言うならば、自分の中に何らかの不安を見出したとき、自分が自由
でないことを知るのだ。

まあ、そこが人生のスタートラインという気もするけど。