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母娘

ファミリーレストランの隅の一席に、物腰の低そうな40才程の
女性と、やや目つきのすわらない、締りのない印象を与える
19、20の少女が入ってきた。少女は長いす側に斜めに腰掛ける
と、片足を椅子の上にのせた。中年の女性は対面する側の
椅子を引き、静かに座った。
しばらくの間無言のまま、2人はメニューを広げてページをめくる。
注文を済ませると、少女はタバコを取り出し火をつけた。一息
吸って、煙を吐き出したのち、言葉を発した。
「ていうか、やってらんないよね。」
私はちらちらとそちらを伺っていた視線を窓の外に移し、かわりに
耳をそばだてた。
「夢もなければお金もない。ホント、馬鹿馬鹿しい。」
ちょっとした間をおいて、中年の女性がゆっくりと言葉を返す。
「でもね、世の中には夢を追いかけられる人なんてごくわずかなのよ。」
「それにしたって、月給12万の工場労働者。一体何が楽しいんだか。」
「○○さんもまじめに働いているでしょう?そんなことを言っていちゃ駄目。
たくさんの人がこつこつと働いているのよ。」
再び沈黙が流れる。
どうやら2人は母娘のようだ。私がちらりと一瞥すると、娘は先ほどの
体勢のまま、片肘をついてタバコをふかしている。あまりに似ても似つかない
2人の風貌を観てとり、ちょっとした驚きを禁じえなかった。と同時に、母親の
真摯な眼差しに対して敬意を感じて、私は思わず笑みがこぼれた。
すぐさま、気取られないように慌てて下を向く。
はてさて、自分だったら娘にどんな言葉をかけるだろうか。そんなことを
ぼんやり考えていると、娘がまた唐突に口を開く。
「結婚までって思えばなんとか働けるのかもしれないけどさ。それにしたって
もっと面白く生きられないもんかねぇ。」
娘は続けて言った。
「じゃなきゃさ、価値観が自然に変わったらまた別かもしんないけどさ。
でもとりあえず今は駄目。」
そんな調子で娘が途切れ途切れに感情を吐露するのを、母親はだまって聞き、
ときどき優しく諭す言葉を返す。
こういう光景は失業者の我が身にこたえる。
私は伝票を手に取り、レジへと向かった。

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